
自営業や個人事業主の年金は少ない?老後資金への対策方法をわかりやすく解説
2023年3月31日 (2024年9月1日更新)
自営業や個人事業主、フリーランスには、「老後が不安定」というイメージがつきもの。果たして公的年金だけで老後を暮らしていけるのか、不安に感じている人も多いでしょう。そこで今回はそうした方たちが受け取れる年金が会社員とどう違うのか、iDeCoなど自営業者や個人事業主が加入できる年金制度、老後資金の形成に役立つ制度などを解説します。
自営業者が加入できる年金制度
よく知られているように、日本の年金は2階建てになっています。「1階」に相当するのは、20歳以上60歳未満の国民全員が加入する「国民年金(基礎年金)」。2階は会社員が加入する「厚生年金」です。フリーランスの場合厚生年金に加入できませんので、もらえる年金は「1階」部分の国民年金のみ。国民年金は基本的に毎月1万6540円の保険料を40年間払い続けると、65歳からおおよそ月6万5千円ほどを受け取ることができるようになっています(未払い期間があると受給額も少なくなります)。
一方、会社員の場合はそれに「2階」部分の厚生年金が上乗せされるので、男性の平均受給額は月に15万~17万円前後となります。さらに「3階」に相当する企業年金が上乗せされる場合、月に数十万円の年金を受給する人もいます。国民年金しかもらえないフリーランスに比べて恵まれているように思えますが、その分、会社員は現役時代に給料から多額の保険料を天引きされているのです。つまりフリーランスの年金額が少ないのは、現役時代に支払う保険料が少ないからにほかなりません。ですから、現役時代から老後資金の準備を自分の手で行い、年金額の不足分を補填する必要があります。フリーランスが使える主な年金制度は以下の4つです。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
公的年金とは別に、自分でお金を積み立てて老後に備えられるシステムです。フリーランスの場合、毎月5千円~6万8千円の掛け金を支払いますが、運用先は投資信託や定期預金などから選ぶことができます。安全性を重視するなら預貯金や保険商品、多少のリスクはありますが、ある程度のリターンを狙うなら投資信託がいいでしょう。掛け金と運用益は、60歳以降に受け取ることができます。メリットとデメリットは以下の通りです。
【メリット】
- 掛け金は全額所得控除
掛け金が所得控除になるとその分、支払うべき所得税や住民税が安くなります。例えば年収500万円の自営業者が、上限である月6万8千円の掛け金を支払うと、年間の節税額はなんと24万円以上(試算)にも! - 運用益は非課税
お金を運用して得た利益(預貯金の利息や株式投資の譲渡益や配当金など)には、20.315%もの税金がかかります。仮に1年間に10万円の年利があっても、2万円以上が税金で差し引かれて手取りが減ってしまうのです。月に6万8千円を30年間、年利1%で運用すると、運用益にかかる税金はトータルで80万円以上! ところが確定拠出年金なら、これがすべて非課税です。
【デメリット】
- あくまでも年金ですので、60歳以降でないと受け取りができません
- 投資商品は利率が下がることもあります
個人年金保険
保険会社と契約して、将来の年金を自分で準備することができる貯蓄性保険の一種です。契約時に定めた年数経過後、一定期間(5年、10年など)毎年、一定額の年金が受け取れます。
【メリット】
- 確実な老後資金の準備ができる
契約した分の年金額は保証され、預貯金よりもよい利率で貯めることができます。 - 節税ができる可能性あり
払い込んだ保険料額に応じて所得税・住民税を節税できる可能性があります。所得税・住民税は所得額が高いほど税率も高くなる仕組みのため、高所得な人ほど、所得控除による節税効果は大きくなります。
【デメリット】
- 多くの個人年金保険は、契約時点で将来受け取る年金額が決まっているため、インフレに対応できません
- 途中解約をすると損してしまいます
国民年金基金
フリーランスと会社員の年金受給額の格差を解消するため1991年に創設された公的年金制度で、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せした年金を受け取ることができます。
【メリット】
- 掛金が将来も一定
少ない掛金・自由なプランで始められ、加入後もライフサイクルに応じて月々の掛金を増減することもできます。 - 掛け金は全額所得控除
所得税や住民税が軽減されます。
【デメリット】
- 財務状況が芳しくないため、近年は掛け金が値上げされ、予定利率が下がっています
- 物価スライド制ではないため、インフレに対応できません
- 一定の理由なく途中で脱退できません
- 受給金額が掛け金を上回るのに、20年程度時間がかかります
付加年金
月額400円の保険料で、受け取れる年金が増える制度です。年金を受給する際に年間で「200円×付加保険料納付月数」が上乗せされます。20歳から60歳までの40年間、付加保険料を納めていた場合の年金額は年に9万6千円ほどです。
【メリット】
- 2年間で元がとれる
40年間、毎月400円を支払い続けた時の支払い総額は19万2千円。年金の受け取り額は年に9万6千円ですから、2年間受給できればそれで元がとれます。65歳から受け取り始めたとしたら、67歳以降に受給する分はまるまる得する計算になります。
【デメリット】
- 65歳前に亡くなった場合、納付した付加保険料が全額戻ってきません
- 67歳前に亡くなると、支払った金額と受け取った金額の差額分、損をします
- 国民年金基金との併用ができません
自営業の老後資金対策
「現役を引退したら、生活費はそれほどかからない」というイメージがありますが、老後でも生活費は現役の7割程度、平均で月に26万円~27万円ほどかかるというデータがあります。もともとの年金受給額が低いフリーランスが、現役時代と同程度の生活水準を維持するには、年金以外の老後資金対策が必須。年金以外の老後資金対策には、以下のようなものがあります。
小規模企業共済
経営者が廃業した時の退職金代わりになるもの。掛け金は1ヶ月1000円~7万円で、お得な利回りで老後資金の準備ができます。最大で掛け金の120%戻ることもありますが、年数によっては元本割れもあります。
【メリット】
- 掛け金は全額所得控除
確定拠出年金と同じですが、確定拠出年金との併用ができるので、仮に両方を上限まで利用すれば節税効果もダブルになります。つまり、老後資金を貯めながら節税できます。 - 予定利率が高い
銀行にお金を預けても金利は0.001%程度ですが、小規模企業共済の予定利率は1~1.5%!例えば30年間、上限の7万円を掛け続ければ、受取額は約3000万円。試算では通常の預貯金よりも500万円ほど利息が多くなります。
【デメリット】
- 廃業などの理由以外で解約すると、掛け金納付月数が20年未満の場合、元本割れになります
事業者向け不動産担保ローン
持ち家がある人は、不動産を担保に融資を受ける「不動産担保ローン」を利用するのも、老後資金を作る方法のひとつです。
【メリット】
- 好条件で借入可能
不動産を担保にするため、一般のローンよりもまとまった金額を低金利で借り入れられます。
【デメリット】
- 返済不能になった場合、担保の不動産が売却されてしまう可能性があります
リースバック
自宅を売却して一括でまとまった資金を受け取り、その後も賃貸の形で住み慣れた家にそのまま住み続けられるサービスです。
【メリット】
- まとまった資金が一括で調達できる
- 住み慣れた家に住み続けられる
- 固定資産税などの維持費が不要になる
【デメリット】
- 自宅の所有者の名義が変わります
- 家賃が発生します
リバースモーゲージとリースバックの違いは?どちらを活用するのが良いか徹底比較
リバースモーゲージ
自宅などを担保にすることで、住み続けながら金融機関から融資を受けられるシニア世代向けの金融制度です。融資枠内で、年金のように定期的・継続的に借入れたり、利用したい時にまとまった融資を受けられたりと、受け取り方を自由に選ぶことができ、最終的には死亡後に持ち家を売却することで一括返済しますので、生前は生活にゆとりが生まれます。また近年増加している、空き家問題の解決法としても注目されています。
【メリット】
- 家に住み続けることができ、自由にリフォームも可能
所有権が移転せず、終生、住み慣れた家に住み続けられます。 - 返済は利息のみ
元金は借入人の死亡後に持ち家を売却して返済に充てますので、基本的に生前は返済する必要がありません。 - 高齢者でもまとまった金額が借り入れ可能
年齢制限の関係で通常の住宅ローンや消費者ローンを利用できない高齢者様も借入れが可能です。
【デメリット】
- 「変動金利」が採用されているので、金利上昇の影響を受けやすい傾向があります
- 不動産価格の下落で利用できる額が減る可能性があります
- 存命中に借りた額が上限に達してしまった場合は、それ以上の融資は受けられなくなってしまいます
リバースモーゲージとは? 仕組みとメリットやリスクなど注意点をわかりやすく解説!
将来のために「今何ができるか」を知ろう
「フリーランスに定年はない」「死ぬまで現役」といわれます。それも真実ではありますが、急に仕事が途切れるかもしれないという不安や、老後の心細さと隣り合わせなのも、フリーランスの宿命です。正体のない不安に押しつぶされないようにするには、今からどんな準備ができるかを知ることが大事です。「今できること」をひとつずつ確実に積み上げていき、不安のない幸せなシニアライフを自分の手で築きましょう。
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