
【FP解説】老後の住まいは持ち家?賃貸?マンションと戸建てはどちらが良い?悩み事を解決
2023年9月16日 (2023年11月3日更新)
老後はどんな家に住みたいですか。「持ち家をそのまま終の棲家にしたい」「メンテナンスやリフォームの不安がない賃貸マンションに住みかえたい」などさまざまな希望があるでしょう。また、戸建てに憧れるが、住宅ローンが不安」という人もいると思います。多種多様な住み方があり、いずれにもメリットとデメリットがあります。老後の住まいの悩み事を解決するため、どうしたらよいかをわかりやすく解説します。
老後の住まいは持ち家?賃貸?
老後の住まいは持ち家が良いか、賃貸が良いかは、一概には言えません。それぞれメリットとデメリットがあるためです。メリットとデメリットを引き比べながら、どんな人に、どちらが向いているのかを解説します。
持ち家のメリットとデメリット
持ち家のメリットは、家賃がかからないことです。収入が少なくなる老後において、家賃の負担がないのは重要なメリットです。住宅ローンを払い終わっていれば、毎年の負担は固定資産税だけになります。住み慣れた家に暮らす精神的な安定もメリットの一つ。持ち家に住めば、安心、安定が手に入ります。
一方で持ち家のデメリットは、メンテナンスやリフォームの費用がかかることです。建物が老朽化したことによる修繕費、バリアフリー住宅にするためのリフォーム費用は、賃貸で生じる家賃の総額より高くなるかもしれません。また、利便性の低い場所に持ち家がある場合、老後の足腰では生活がさらに不便になる可能性が否めません。車がないと暮らせないような場所では、高齢のため運転ができなくなってからの生活は困難となります。
以上のメリット、デメリットを踏まえ、持ち家での老後ライフに向いているのは、以下のような人です。
- 比較的新しい家に住んでおり、大規模な修繕の必要がない
- すでにバリアフリー化された住宅である
- 住み替えにかなり精神的な負担を感じる
- 利便性の高い立地に持ち家がある
賃貸のメリットとデメリット
賃貸のメリットは、修繕費や固定資産税がかからない点です。突発的なメンテナンス費用がかからないというだけで精神的なゆとりを感じる人もいるでしょう。何か不便を感じたら別の物件を探すといったことも可能です。また高齢になるにつれ、移動が辛くなります。そこで賃貸ならどんどん駅近、病院の近くなどに居を移すこともできます。
一方で賃貸のデメリットは、家賃が発生することです。定年退職して収入が激減する中、月々の支払いがあるのはかなりの負担です。さらに更新料や、住みかえのたびに初期費用が発生します。また、高齢になり収入が減るにつれて、新しい賃貸契約を結ぶのが難しくなるというデメリットも。いざ賃貸への住み替えを考えたときに、引っ越しができない可能性があります。
以上のメリット、デメリットを考慮すると、老後の賃貸に向いているのは、以下のような人です。
- 家賃をカバーできる程度の、一定の収入を老後も確保できる
- 持ち家が古く、住み続けるには修繕が必要だが、土地を売却できる可能性が高い
- 持ち家がなく、今から家を購入するには住宅ローンが心配
- 年齢や事情によって住むところを変えたい
老後の住まいは一戸建て?マンション?
老後の住まいとして、一戸建てが良いか、マンションが良いかと悩んでいる人もいるのではないでしょうか。一戸建てにも、マンションにも、メリットとデメリットがあります。それぞれ解説します。
一戸建てのメリットとデメリット
老後の住まいとして考えたとき、一戸建てのメリットとして挙げられるのが、玄関から居住空間までの距離が短いことです。将来、車椅子での生活になったときのことを考えると、玄関スロープからドアを開ければすぐ自宅へ入れるというのは魅力的。平屋であれば階段もなく、完全バリアフリー生活を叶えることができます。また、マンションと比較して他の人の生活音が気になりにくいため、老後の静かな生活を確保できます。
一方で、一戸建ては駅から遠いなど利便性に欠ける可能性もあります。また、修繕費のかからない賃貸であっても、家の掃除や庭の草むしりなど日常のメンテナンスは居住者の責任です。防犯上も、セキュリティがしっかりしているマンションに比べると少し不安が残ります。
以上のメリット、デメリットを考慮すると、次のような一戸建てであれば、老後の住まいに向いているといえるでしょう。
- バリアフリー住宅
- できれば平屋
- 駅や病院、スーパーが徒歩圏内
- 体力面に自信があり日々のメンテナンスができる
- 草むしりなどのメンテナンスを業者に依頼できる環境にある
- 警備会社や見守り機能がある製品の導入で、防犯対策ができる
マンションのメリットとデメリット
一般的に「老後は一戸建てよりもマンションが良い」といわれています。それは、マンションのほうが駅近で利便性が高い物件が多く、防犯上の対策も万全で、大きな庭などがないぶんメンテナンスも最小限で済むためです。これらがそのまま、老後のマンション住まいのメリットとなります。
一方で、マンションのデメリットは、エントランスから居住空間までの距離が長い傾向にあることです。家の中がバリアフリーでも、家の玄関に着くまでは階段を使わなければならないマンションであれば、高齢者には大変です。隣の生活音が気になることもありえます。
以上を踏まえると、老後の住まいとして適しているマンションは、以下のような物件です。
- バリアフリー住宅
- エレベーター完備
- 駅や病院、スーパーが徒歩圏内
- セキュリティ完備
- 防音性が高い
住み替えを検討するときの注意点
マンションか戸建てか、持ち家か賃貸か。迷っている人は、以下の3点に注意しながら検討しましょう。
今の家に住み続けた場合の維持費や問題点をシミュレーションする
今の生活に不満がないなら、住み慣れた家にずっと住めた方が嬉しいですよね。今の家に住み続けた場合、どんなタイミングでどのような出費があるか、どんな問題が生じて、その解決法は何かをシミュレーションしてみましょう。
家は築10年を過ぎたころから、外壁の塗り替えなど、主に外部のメンテナンスが必要になります。20年を過ぎると水廻り、それ以上になると床下や屋根の修繕が必要になる可能性が高まります。居住者が高齢になればバリアフリーへのリフォームも欠かせません。必要になる可能性のある費用と、今の貯蓄額を引き比べて、維持費が捻出できるかどうかを考えてみましょう。
また、高齢になるとどんな問題が出てくるのか、費用面以外にも考えてみます。車がないと生活できないような土地であれば、乗り合いタクシーなどがないかを調べてみましょう。セキュリティ面が不安なら、警備会社への加入や見守り家電等の購入が有効です。こうして、どうやったら問題をクリアできるかを考え、費用面も含めて解決できそうであれば、今の家に住み続けるのがいいです。
なお、「今の家に住み続けたいけれど、費用面で無理がある」と頭を抱えるなら、リバースモーゲージを検討するのも手です。リバースモーゲージとは自宅を担保に借り入れをする仕組みのことで、契約者の死後、相続人等が空き家となった家を売却するなどの方法で元金を返済します。生存中に返済するのは毎月の利息のみなので、住み慣れた家で暮らしながら、わずかな返済額で資金を調達できます。
希望の住居に住みかえたときの費用を算出する
高齢者向けのマンションなど、希望の住居がすでに決まっている場合は、住みかえたときの費用を算出しましょう。都心のマンションなどは費用がかなり高いケースも見られます。また、購入ではなく賃貸で住む場合、資金が足りなくなる可能性も出てきます。自宅を売却して得られる資金で住み替え費用を賄えるかどうか、不動産会社等にも相談してみましょう。
子世代の意向にも耳を傾ける
例えば、住み慣れた家を売却して住みかえを行ったとき、子世代から「実家は残しておいてほしかった」「定年退職後、戻りたかったのに」などといわれる場合があります。子世代の意向にも、耳を傾けましょう。事情を知った子世代から援助を受けることで、今の家を維持できるケースもあります。
老後の住まいの考え方
老後の住まいを決定するときには、以下のような考え方を大事にしましょう。一戸建てでも、マンションでも、持ち家でも賃貸でも、基本的な考え方は変わりません。
高齢になるほど利便性の高い土地に住む
ずっと都心に住んでいた人の中には、「老後は田舎暮らしが夢」という人もいるでしょう。開放感あふれる田舎に居を移す場合にも、利便性についてはきちんとチェックしましょう。車がないと生活できない場所では、高齢者は長く住めません。地方であっても、駅近、あるいはバス停が近くにある、スーパーや病院などが徒歩圏内といった条件を外さずに物件探しを行います。
なるべく階段を使わなくてよい物件にこだわる
一戸建てなら平屋、あるいは急な階段のない家を探しましょう。マンションは、エントランスから自分の居住空間までのアクセスが容易であることが条件です。5年後、10年後の自分を想像し、極力バリアフリーであることにこだわりましょう。
資金調達はあらゆる手段を考える
持ち家を使って資金調達をする手法として、上項でご紹介したリバースモーゲージのほかに、リースバックがあります。リースバックとは、持ち家を売却した後、賃貸契約を結び直すことで、持ち家にそのまま住むことができる仕組みです。一括してまとまった資金が手に入るため、住みかえのための資金調達に使えます。希望通りの物件が見つかるまで、家賃を払ってわが家に住めばいいわけです。
このように、資金調達はあらゆる手段を検討しましょう。
まとめ
老後の住みかえを検討するときには、あらゆる問題をシミュレーションし、「ここなら安心」という住居を見つけるのが大事です。住居のタイプごとにメリットとデメリットがあるため、まずは「どこに住みたいのか?」を最優先し、どうしたら問題点を解決できるかを検討しましょう。子世代を含めた家族全員で取り組むのが大事です。
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