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【FP解説】確定拠出年金はデメリットしかない?メリットや失敗しない方法を解説

2025年5月26日

確定拠出年金は私的年金の一つで、個人型と企業型があり、掛金をコツコツ拠出して運用することで将来の年金を増やすことができる制度です。「確定拠出年金にはデメリットしかない」といった話を聞いて、「やめた方がいいのだろうか」と迷う人もいるかもしれません。デメリットだけでなく、メリットも考慮して判断するのが賢い方法です。確定拠出年金のデメリットとメリットを紹介したうえで、失敗しない方法について解説します。

確定拠出年金とは

確定拠出年金とは、毎月決まった金額の掛金を自ら運用し、運用結果に基づいて年金の給付額が決まる制度です。確定拠出年金を利用すると、将来受け取ることのできる年金が増えます。その仕組みや種類、退職金との違いについて解説します。

企業型確定拠出年金の仕組み

確定拠出年金には、企業型と個人型があります。2001年に、企業型確定拠出年金がさきがけて誕生しました。従業員ごとに毎月決まった金額を天引きし、その金額を掛金として拠出(積み立て)します。そして拠出した掛金は、従業員が自ら運用商品を選んで運用します。

60歳以降になったら、掛金と運用益の合計額を年金として受け取ることができます。基礎年金、厚生年金にプラスして年金が受け取れるわけです。受け取り時期は、60歳から75歳までの間であれば、好きな時期を選べます。

拠出する掛金には、所得税がかからない優遇措置があります。また、運用中の収益も非課税です。本来、投資を行うと運用中の収益には約2割の税金がかかるためお得です。

企業型と個人型の違い

確定拠出年金には、企業型と個人型があり、個人型の確定拠出年金はiDeCoと呼ばれます。個人型の確定拠出年金も、基本的な仕組みは同じであり、あらかじめ決めた掛金を拠出し、拠出者自身が運用して、将来の年金にあてます。

企業型と個人型の違いは、主に限度額にあります。企業型の場合、拠出限度額は最高で月額55,000円です。一方、個人型ではどんな年金に加入しているかにより、拠出限度額が変わります。

個人型の場合、国民年金にだけ加入している自営業者であれば、月に6万8,000円を限度に拠出できます。厚生年金に加入している会社員であれば、月2万円までが最高限度額です。専業主婦(夫)の場合は、月に23,000円が限度額になります。

なお、企業型は最長70歳未満の厚生年金被保険者が加入できますが、個人型は最長で65歳未満が加入対象になります。

退職金と企業型確定拠出年金の違い

一般的な退職金は、会社側が従業員のために積み立て、運用方針は会社側が決めます。また、受給額は社内の規定に基づいて、退職時に支払われます。掛金や運用益への税制優遇措置はありません。

企業型確定拠出年金は、会社側が従業員のために積み立てますが、運用方針は従業員が決めます。受給額は運用実績によって違い、受給時期を選択できます。掛金や運用益に対しては、非課税となります。

つまり一般的な退職金は、会社が従業員のために行う積み立てであり、企業型確定拠出年金は従業員自身が運用して受け取り時期も決める制度です。企業型確定拠出年金は企業内の制度に紐づいていないので、転職した時に積み立てた資産を他の年金制度へ移管することが可能です。この仕組みを「ポータビリティ」といいます。

確定拠出年金のデメリットと注意点

確定拠出年金には以下の5つのデメリットがあります。デメリットを回避するために気をつけるべき注意点を含めて解説します。

60歳までは引き出せない

確定拠出年金は、原則として60歳になるまで受給が開始されません。つまり途中で一部現金を引き出したり、中途解約したりといったことが困難です。家を建てる、子どもの留学のためまとまったお金が必要といったタイミングで、資金が足りなくなる恐れがあります。

月々の掛金の上限は決まっていますが、家計や将来のライフプランを考えたとき、無理のない範囲と思える金額を積み立てるようにしましょう。

運用によっては元本割れしてしまうリスクがある

運用する人が投資に詳しいとは限りません。運用の状況によっては、元本割れしてしまうリスクがあります。元本割れすると、将来もらえる年金額が、もともと掛けている金額の合計よりも減ってしまいます。

定期的に資産配分を見直したり、投資先を増やして分散投資にしたりして、いざというときの財産の目減りを最低限にしましょう。また、元本確保型の商品だけを選ぶという選択肢もあります。

将来の年金額が決まらないまま老後のプランを考えなければならない

確定拠出年金は、将来の年金額が定まりません。いくらもらえるかわからないまま、老後の家計プランを考えなければなりません。

元本割れのリスクはあるものの、とりあえずは掛金がそのまま戻ってくるという想定で老後の家計プランを考えましょう。運用益を「ご褒美」とし、旅行や趣味にあてると割り切って考えるといいかもしれません。

企業型は転職手続きが必要になる

企業型の場合、転職手続きをするときに確定拠出年金の移管を申請しなければなりません。通常の転職手続きのほかに、移管手続きが必要です。転職の際は手続きを忘れないように人事部などに移管時の必要事項を聞いておきましょう。

投資運用に詳しい人が有利

企業型も、個人型も、自ら投資先を選んで運用をする制度のため、投資運用に詳しい人の方が有利な実情があります。制度を使いこなすためには、投資の勉強が必要です。

確定拠出年金のメリット

確定拠出年金のメリットは、大きく以下の3点です。

老後の年金が増える

運用益がわずかであっても、コツコツ積み立てればかなりの金額になります。それによって老後の年金額が増えるのは、とても嬉しいことです。

税制優遇措置が手厚い

掛金と運用益に税金がかからず、そして受け取り時にも税制優遇措置があります。一時金として受け取れば退職所得の扱いとなり、退職所得控除が利用できます。年金として受け取れば、公的年金等控除が利用できます。

資産運用の勉強に役立つ

企業型も個人型も、自分で投資先を選んで運用するため、どうやったら利益を増やせるかを自然と学ぶことになります。すると資産運用の勉強になり、他の場面で投資を行うときにも知識を役立てることができます。

確定拠出年金を失敗しないためにできること

なるべくリスクを抑えるためには、次のような工夫をしましょう。

元本確保型を中心に商品を選ぶ

確定拠出年金には、元本割れのリスクがない元本確保型が用意されています。もしどうしても元本割れを防ぎたいなら、元本確保型を中心とした運用プランにしましょう。ただし、リスクが少ないぶん、リターンも少ないことは念頭に置いておきましょう。

運用先を分散させる

たくさんの運用先に分散投資すると、運用リスクの軽減につながります。できれば値動きが異なる資産を組み入れるのが安心です。例えば株式と債券は、お互いに値動きが異なる傾向にあります。

定期的に運用プランを見直す

ときどき運用成績をチェックして、定期的に運用プランを見直すのが大事です。長期投資をするほどリスクは少なくなりますが、あまりに成績が芳しくないときは、投資先を変えることも検討しましょう。

まとめ

確定拠出年金は、積み立てる金額だけが決まっており、受け取る金額は運用益によって決まる私的年金制度です。デメリットとメリットを確認したうえで、自分に合っていると感じた場合は検討しましょう。

なお、会社員の場合、すでに確定給付企業年金へ加入しているなら拠出額が制限されます。人事などに確認してみましょう。

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